大判例

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仙台地方裁判所 事件番号不詳 決定

主文

本件申立を却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

一、申立人代理人は、「被申立人が、昭和四〇年一二月二一日、亘名共衛第三三六号をもつて、申立人に対して行なつた、し尿取扱業およびし尿処理場使用許可取消処分の効力は、右処分に対する本案判決が確定するまで、これを停止する。」旨の裁判を求め、その理由は次のとおりである。

(一)  申立人は、被申立人より、昭和四〇年五月一一日亘理名取共立衛生処理組合し尿処理条例第八条に基き、同日から昭和四一年三月三一日まで、し尿取扱業およびし尿処理場使用についての許可処分を受け、右業務に従事してきたものである。

(二)  ところが、被申立人は、昭和四〇年一二月二一日、申立人に対し、申立人がこれまで清掃法違反で起訴されたり、刑罰を科せられたりしたことがないにも拘らず、同月二日施行の政令第三六四号「清掃法施行令の一部を改正する政令」第二条の二第二号に基き、申立の趣旨記載の指定業者を取消す旨の行政処分をしたが、該処分は無効であるので、申立人は昭和四一年一月二五日仙台地方裁判所に対し、被申立人を被告として右行政処分無効確認請求訴訟を提起した。

(三)  しかるに、申立人は右の本案判決の確定を待つていたのでは、その間、右処分の執行により全く生計の途を閉ざされ、回復することのできない損害を蒙ることが明らかであり、他方、右許可処分の期限である昭和四一年三月三一日が迫つているので、その前に右取消処分の効力を停止させ、新たな許可を受けられる実績をつくる緊急の必要があるので、右処分の効力の停止を求めるため、本申立に及んだ次第である。

二、当裁判所の判断は、次のとおりである。

申立人主張のような本案訴訟が、当裁判所に提起されたことは当裁判所に顕著であり、被申立人が申立人に対し、申立人主張のような行政処分(以下本件処分と略称する。)をしたことは、申立人提出の疎明資料によつて明らかである。

そこで、申立人が、本件処分の執行により「回復の困難な損害」を蒙つたかどうかにつき判断する。申立人提出の疎明資料によると申立人は、昭和四〇年五月一一日、被申立人より同日から昭和四一年三月三一日まで、し尿取扱業およびし尿処理場使用についての許可処分を受け、以来、バキユームカー二台を購入して、右業務に従事してきたものであるところ、この間、月平均約二〇万円の収益をあげ、このうち、いすず自動車に対しバキユームカーの購入代金(修理代を含む)として月三万円、さきに一〇〇万円の融資を受けた七十七銀行に対し、その返済金として月二万五千円、運転手二名および助手一名に対し給料として月七万二千円、ガソリン代として月二万八千円を支出し、これらとその他の諸雑費を引くと、生活費に充てられるのは、月約四万五千円となり、これで申立人ら親子三人の生計を維持してきたものであるが、本件処分により、右業務による収入の途を絶たれたため(なお、申立人は本件処分前の昭和四〇年一〇月二日被申立人から前記し尿処理条例第二〇条に基き、同月三日から同年一二月三一日までの三ヶ月間、前記業務を禁止する旨の行政処分を受けていたもので本件処分は、右禁止期間中になされたものである。)、その生活は相当窮迫していることを看取するに難くない。すなわち、(一)右業務禁止の行政処分を受けたのち、申立人ら親子三人の生活は、次第に苦しくなり、ために申立人は同年一二月七日宮城県仙台福祉事務所長に対し、生活保護法による保護申請をなし、本件処分後である昭和四一年一月七日、同所長から保護決定を受け、それ以来、申立人らは、生活保護を受けている有様であり、他方申立人の妻は、無職であるうえ、盲腸ゆちやくのため現に通院加療しているが、国民健康保険による五割の保険給付しかえられず、月五千円の医療費を支払つていること。(二)これに加え、申立人はさきに営業のために購入したバキユームカー二台の代金の残額支払いなどにつき、現在約一五〇万円ほどの借財を負担している状態であり、他面、前記業務禁止期間の解ける同年一月からの業務の再開を予想し、運転手ら四名と雇傭契約を結び、バキユームカーを整備していたところ、本件処分を受けたものであつて、もしこのままの状態で右業務の更新期である同年四月一日を経過してしまうと、これらの準備が無意味になるばかりでなく多額の損害を蒙ることが認められる。

しかしながら、行政事件訴訟法第二五条第二項本文にいわゆる「回復の困難な損害」とは、社会通念上、原状回復不能ないしは金銭賠償不能の損害と解すべきであるから、前記(二)の損害をもつて、同項本文の損害となしえないばかりか、右(一)についても、申立人ら親子三人は、生活に困窮してはいるが、前記疎明資料によれば、申立人らはこれまで実家の兄からの借金により生活を維持してきたもので、今後とも、実家からの援助により生活を保持していくことが可能で、申立人としては、前記生活保護を辞退する意向であることが明らかであり、これによれば、申立人らは、現段階においては、衣食につき差し迫つた窮乏状態にあるものとは認められず、これだけでは、未だ回復の困難な損害には該らないし、その他申立人が本件処分により回復の困難な損害を蒙るものと認めることができる疎明がない。

してみると、本件申立はその余の点につき判断するまでもなくすでに理由のないことが明らかであるから却下するものとし、申立費用につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり決定する。

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